遺産分割のやり直しはできるの? 2022/05/25 (水)
【ご質問】
昨年父が亡くなり遺産分割をした上で、相続税の申告書を税務署に提出しています。
しかし、分割をやり直したいと考えています。分割をやり直すことはできるのでしょうか?
【ご回答】
民法上は相続人全員が賛成すれば再分割は可能です。
しかし、税法上は贈与税や譲渡所得税が発生する場合があります。
♢民法上の考え方
①合意解除
新たな契約として適法に成立した遺産分割について、共同相続人全員でその全部又は一部を合意解除して改めて遺産分割を行うことはできます。
②債務不履行による解除
民法上、債務不履行による遺産分割の解除は認められません。
例えば、「共同相続人の一人が相続財産を全て相続する代わりに、母の面倒をみる」という約束をして遺産分割が確定した場合において、
その約束を守らないことを理由に、その遺産分割を解除することはできません
♢相続税法等の考え方
①合法な分割の場合
相続人が適法に成立した遺産分割を合意解除して、改めて遺産分割を行った場合には、一旦申告書を提出してしまいますと、
原則的に新たな所有権の移転として捉えることになり、その内容に応じて贈与税課税や所得税課税が行われることになります。
相続税基本通達19-2-8においては「当初の分割により共同相続人又は包括受遺者に分属した財産を分割のやり直しとして再配分した場合には、
その再配分により取得した財産は、同項に規定する分割により取得したものとはならない。」とされています。
これは、遺産分割の合意解除が、一般的に、共同相続人間の自由な意思に基づく贈与等を意図して行われるものであると考えるからです。
②遺産分割が無効な場合
一部の相続人だけで遺産分割を行った場合など遺産分割が無効な場合や、詐欺や脅迫による遺産分割が行われた場合など遺産分割に取消理由がある場合には、
遺産分割の解除の問題ではないことから、その後において適法な遺産分割が行われた場合には、贈与税課税や所得税課税は生じないこととなります。
最後に
民法上、遺産分割の合意解除が可能であるからといって、簡単に再度遺産分割を行うと予期せぬ課税関係が生じる場合があるため、十分な注意が必要です。
明らかに遺産分割が無効である場合や、取消原因がある場合を除いて、安易に遺産分割の合意解除は行うべきではなく、
当初の遺産分割が相続人の最終の意思決定になるように、税金面も考慮して遺産分割をする必要があります。
信頼のおける税理士に相談しながら、分割協議を進めていくことをお勧めします。
税理士法人エスペランサでは、常にお客様に寄り添いながら税金のアドバイスをさせて頂いております。お気軽にご相談ください。